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固有名詞の話

昔、学校でこう教わりました。「固有名詞に冠詞はつかない。が、国名にはtheがつく。でもJapan, Canadaは例外である。」
これは説明としては適切ではありません。むしろ、

固有名詞には冠詞をつける必要はないが、つけたきゃつけてもいい。もしわざわざ定冠詞をつけたときは、無冠詞の固有名詞に比べ、なんか情報・制限が加わっている。

ということです。つまり、なにかしら条件をつけたいときは固有名詞に冠詞をつけてもかまいません。
また、国名に含まれる普通名詞には当然冠詞が必要だし、国名がほんとに固有名詞なら冠詞は不要です。

人名の場合

(初対面の人に自分の名前をいわなきゃならないような場面で)

"My name is Oizumi."
"Oh, you are the Oizumi-san, the famous actor ?"
"No,no,no, No! I'm not an actor. I'm just an Oizumi".


「大泉です。」「え?あの有名俳優の大泉さんですか?」「いえいえ、とんでもない。私はただの大泉ですよ。」って感じでしょうか。この場合冠詞は形容詞のような働きをしますので、固有名詞にだってつけられます。ただし、文章中ではItalicにするのだとか。
the Oizumiで「話し手にとっては1人しかいない有名人の大泉さん」(世間全判で有名かどうかは別な話)、 an Oizumiで「全国にたくさんいる普通の大泉さんのひとり」。

じゃ、
   " You know, I am the Oizumi!".
   (「ご存じ!、大泉で ございます!」、かな?自信はない。)


The Piglet lived in a very grand house in the middle of a beech-tree, and the beech-tree was in themiddle of the Forest, and ....
Winnie-the-Pooh, Chapter 3, A.A. Milne
「くまのプーさん」でコプタ初登場の場面。pigletは普通名詞だけど、ここでは大文字になっていて固有名詞で、石井桃子訳なら「コプタ」。なのにTheがついている。 (理由はよくはわからないけれど、たぶん)ミルンが息子のクリストファー・ロビンに対して「おまえのあのコブタはね、この森ではブナの木に住んでいるんだ。」とお話してる感じだと思う。たぶんだけど。


"Did you say (your are ) Bittersohn, sir?"
"I didn't, but she did, and I am."
"Not the Max Bittesohn who tracked down old Thaddeus's Corots for him?"
The Palace Guard, Charlotte MacLeod
「ビターソン君と言われたかな?」
「私ではなく姪御さんがいったのですが、ええ、そうです。」
「あのマックス ビターソン君じゃないだろうね? ThaddeusにCorotsの風景画を取り返してやった?」
(この訳自身ありません。Corotsという風景画の画家がいるいにはいるのですが。)


Sarah held out her hand.
"It seems odd we haven't met. I thought I knew everyone on the force by now."
"Oh you are that Mrs. Kelling?"
The Lieutenant Davies shook the small hand carefully, as if he were afraid it might come off.
The Palace Guard, Charlotte MacLeod
サラは(握手のため)手を差し出した。
「お会いしたことがないなんて不思議ですわね。警察の方は皆さんにお会いしている思っていましたのに。」
「すると、あなたがあのケリング夫人ですか。」
デイビス警部は、サラの小さい手が壊れやすい物であるかのようにそっと握手した。

複数のものから構成される集合名詞の場合


The Simpsons = シンプソン一家
The Inugamis = 犬神家の一族


意外だったのが「アダムスファミリー:The Addams Family」。これも上の範疇を思っていたし、実際、例としてあげている教科書もあるんですが、実は本当に姓がAddamsだった。 ゴメスの名前は、Gomez Addams です。sで終わってて複数形にできないだけかもしれないけれど。



Mr. Max Bittersohn seized the elbow of his remarkably attaractive young landlady, Mrs Sarah Kelling of the Bacon Hill Kellings.
The Palace Guard, Charlotte MacLeod
Max Bittersohn氏は、下宿の若く魅力的な大家であり、 Bacon Hillのケリング家の一員であるSarah Kelling夫人の肘をひいた。
Bacon Hillはボストンの地名らしい。このときSarahは半年前に夫をなくしたばかり。でもまだMrsです。ちなみに27歳。
seizedは「つかむ」って感じですが、この文だけ切り出すと乱暴に感じたので。


逆にこういうのもあります。
Max: "Your cousin is a little bit of a screwball in some ways, if you don't mind my saying so."
Sarah: "Why should I? Show me a Kelling who isn't."
The Palace Guard, Charlotte MacLeod
「あなたのあのご親戚 (cousin)は、ある意味ちょっと変わっているでしょう?怒らないでいただきたいのですが。」
「どうして怒るの? ケリング一族でだれか変人でない人なんかいたかしら?」
上のan Ohizumiと同じパターンですが、ここではケリング一族(the Kellings)を知っている前提で、aがついてone of the Kellings.
ここまで読んでもらえれば、固有名詞に冠詞をつけることは普通にありえるのがわかりますよね。

ところで、学校だとcousinは「いとこ」って訳すとおもいますが、ここでは正確にいとこではなくて、曾じい様が再従兄弟(はとこ)くらいの関係の遠縁。つまり、親戚ならだれでも使えるということ。Shakespear作品でも、王族同士はMy Cousinとよびあっていたり。


集合名詞:諸島、列島の場合:The Canaries or The Canary islands, The British isles、The Ryukyus,

国名の場合


中学でならった「国名にはtheがつく、でもJapanは例外」という規則が間違いだというのに気づいたとき、結構腹が立ちました。国の正式名称を単純に固有名詞と決めつけるのがまず間違いです。


Theが必要な場合

アメリカ合衆国 = The United States of America
連合王国 = The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland
イタリア共和国=The Republic of Italy
ドミニカ共和国= The Dominican Republic

固有名詞、または固有名詞から派生した形容詞はAmerica, Great Britain, Northern Ireland, Italyの部分で、united states, united kingdom, republicは政治形態を表す普通名詞です。普通名詞なので冠詞が必要で、アメリカをなのる合衆国は(少なくとも本人たちにとっては)ひとつしかないので、定冠詞The がつきます。あるいは、定冠詞+複数名詞でアメリカに属するすべてのState、州連合、合州国という意味とも考えられます。(どっちかわかりません。)。
英国の場合なら、大ブリテン島を含む連合王国(united kingdom)は地球にはひとつしかありませんので、「The 連合王国」になります。

そもそも連合王国という形態を国号にいれている国は現在は一つしかありませんから、自動的にThe United Kingdom=英国と決めつけることができます。でもイタリアやフランスなどが他国に対してThe Republic=イタリア、フランスということはありません。共和国は山ほどあるからです。(いうのは勝手ですが。)もちろんその国民同士であればthe republic (la repubbilica)という事は自然です。(実際にいうかどうかは知りません。) 日本国内で「国を相手取って・・・」という時の「国」は、日本国あるいは日本国政府をさしているのに対応するのだと思います。


無冠詞の場合

一方、Japan, Canada, Indiaなどは国名に政治形態が入っていないので、完全な固有名詞です。従って冠詞をつける必要はありません。私が中学生の時は、これらの国は、国名にtheつくという規則の例外として説明されましたが、それは逆で、固有名詞には冠詞が不要という規則の典型例というべきです。つまり、日本やカナダの国名に冠詞がつかない特別なケースなのではなく、たんに固有名詞には冠詞は不要、というだけです。(そう教えた方がわかりやすいと思うんだけどなあ。)

実際、戦前の大日本帝国の英語名はThe Empire of Japanです。国は同じなのに政治形態が変わっただけで冠詞の有無が変わったのですから、Japanが問題なのではなく、政治形態の有無が問題なのはあきらかです。で、Japanは固有名詞ですから冠詞は不要、しかしEmpireは普通名詞なので冠詞が必要で、of Japanで一つに限定されるので、The Empireになります。
Yesterday, December 7, 1941 - a date which will live on in infamy - the United States of America was suddenly and deliberately attacked by naval and air forces of the Empire of Japan.

ルーズベルト大統領が議会で真珠湾攻撃を報告する演説から。


さて、個人の場合と異なり、「あの有名なJapanですか。」「いえいえ、そっちではなくただのJapanの方です。」という言い方はまずありえないでしょうが、それでも間違いなわけではありません。冗談につかえるかもしれません。

たとえば、

「Mamiがスイスにいってきたらしいよ。」
「The Switzerland in Europe?(スイスってあのヨーロッパの?)」
「さあ、そこまでは聞かなかった。どこのスイスだろ?」

(探偵物語にこんなシーンありました。あ、工藤ちゃんのほうね。)


ところで、定冠詞theじゃないんですけど、Thisはあります。Thisがありなら、たぶん形容詞的なTheもあるんじゃないかな。
This England never did, nor never shall,
Lie at the proud foot of a conqueror.

   ---WS, "King John", Act 5 scene 7

余計な話:
実は合衆国(合州国)は現在二つ存在するのですが、英語名でThe United Statesとなるのは1国しかないので、他国に対してThe United Statesといえます。(もっとも、他に何十カ国あったって勝手に名乗りそうですが、あの国は。だいたいアメリカって南北合わせてものすごい広い領域なのに、勝手に名前を占有してしまっているし。)。
なお、アメリカ合衆国の場合、united statesの訳が合州国でなく合衆国になるのは、幕末期の日本人にとって米国の民主主義政体は驚くべき特徴だったから、という事のようです。



国名でちょっと理解しにくいのが、定冠詞+「固有名詞の複数」になっている場合。

フィリピン共和国:The Philippines
正式国号がThe Republic of the Philippinesなので、たぶんその略。the Philippinesはフィリピン諸島。しかし、ある本では、複数の島からなる国家だから、という説明があった。よくわからない。


全然わからないのが、The Kingdom of the Netherlands(オランダ王国)、

複数の国が合併してできた国だからだろうか。じゃ、Netherlandってなにさ。


The netherlandsについて新まめ知識
まだ十分にしらべてないのだけれど、いまオランダ、ベルギー、ルクセンブルグのある地域は、中世以前にはnetherland(かその語源の語)とよばれていて、この語には「海より低い土地、低地国」という意味があったらしい。で、いまのオランダはこのnetherland地域にあった複数の国・勢力が連合してできた国だから、The Netherlandsになったらしい。つまりThe Netherlandsは「低地諸国連邦」みたいなことじゃないだろうか。

ちなみに、日本語の「オランダ」は、この連邦の主要国「ホラント」の名前からきているらしい。

さらにちなみに、オランダって、スペインから独立した国だってしってました?

諸島、山脈


The Canaries or The Canary Islands, The British isles(カナリア諸島とか)

The Rocky Mountains, The Alps, The Andes

(てことは、本当はアルプ山脈か?カナリア諸島をカナリーズ諸島とは言わないのだから。)

商品の場合


I've got a Toyota.
I bought a Sony.

固有名詞Toyota, Sonyに不定冠詞がつくと、トヨタ製の車(1台)、ソニーのCDプレーヤー(かなにかを一台)と、大文字のまま普通名詞化する。これも冠詞が名詞を規定してしまうケースですね。みたことはないが複数もきっとあるはず。Hondaが形容詞化していてa Honda (car)の略である、とする本も。

じゃあa Japanで日本製品になるか、っていうと、さあ、それは見た事がない。
(でもa japanは別な意味があります)

大学の正式名

身近ではあるけれど、実はこれがよく分からない。

The University of Tokyo
Tohoku University

東北大学の場合は固有名詞で、無冠詞になるってのはあんまり問題ありません。
一方、 東京大学は、普通名詞universityが先頭にあるので、冠詞が必要になる。しかも形容詞句" of Tokyo"で限定されているので、The University と唯一・限定のtheが必要になる。この場合、ofはatみたいな意味に相当するみたい。これはこれでいいのですが、よくわからないのは"of Tokyo"の方。"of Tokyo"だけで、唯一のTheを使えるほど限定できるのだろうか。この場合は意味からすれば「東京で唯一の大学」ってなるはずです。国立大学だから、って気もしますが、東京にある国立大学は一つではありません。お茶の水大とか電通大とか、いろいろあります。

いろいろ調べてみると、(腑に落ちないのだけれど)、どうも"The University of 地名"の国立大学の場合、言葉としては、国が各都道府県・地域にひとつつつ設置した総合大学、という背景があるような気がします。で、一つの地域には総合大学をいっこしか置かないという国の方針だからTheってことかな?。今後も一つしか置かないという国の方針なら、The Universityでいいんでしょう。国のほこりをかけてるから?
でもなあ、お茶の水大は総合大学だよなあ。


さて、こういう理屈だとすると、ほとんどの国立大学が"The University of"の形式の名前を使えるのだけれど、何故だかTohoku Universityの形式が主流です。
"The University of 地名"の形式を正式名称を使っている国立大は、googleでみるかぎり、 東京大学筑波大学徳島大学琉球大学山梨大学福井大学くらいで、あまり多くはありません。(ただし、筑波大、山梨大、福井大、琉球大はTheがついていないみたい。)
琉球大学だけはちょっと変わっていて、University of the Ryukyusです。たぶん、琉球諸島ってことだと思います。

一方、地方自治体の公立単科大学にはこの形式が結構あります。その地域との結びつきは国立より強いし、複数の県立大をもつところはあんまりないので当然でしょうか。あと、放送大学も。
でも、上の理屈でいくと、いくつでも大学をつくる事のできる私立にはこの形式はないはずなんですが、会津大学が"The University of 地名"の形式でした。どうもこの辺がよくわかりません。会津地方にもう一つ私立大学ができたらどうなるんでしょう。
ちなみに大学以外でも、The Bank of Iwate(岩手銀行)でした。民間企業でも、銀行の場合はなにか歴史的な背景がありそう。



ところで、The University of ~の"of 〜"は、基本的には「大学」という語を修飾する形容詞句(〜の、〜な)です。of Tokyoは、「東京の」「東京に設立された」という形容詞句だし、Miyagi University of Education(宮城教育大学)とかThe University of Electro-Communications (電気通信大学)とか、大学の特徴を示す形容詞句になります。なので、地名以外を名称にしている私立大学でうかつにThe University of 〜 とやっちゃうと、「〜の大学」「〜な大学」になって、かなり気色の悪い響きになるかもしれません。私立大学の学生さん、クラブのユニホームを作る時は、正式名称を確認してから発注しましょう。


偶然見つけたのですが、

国立の静岡大学はShizuoka Universityだけど、
静岡県立大学は、University of Shizuokaでした。
静岡という土地とのつながりの深さの違いかな、という気がしています。
なお、筑波大同様、Theはつけないみたいです。


岩手大学は Iwate University
岩手県立大学は Iwate Prefectural University

でした。

固有名詞+同格の語

The 固有名詞ではないのですが、関連して特徴的なtheの使い方があります。

Alfred the Great(アルフレッド大王)
Jack the Ripper(切り裂きジャック)
Alexander the Great(アレキサンダー大王)
Billy the Kid
Conan the Barbarian(コナン・ザ・グレートの原題)
William the Conqueror(ウイリアム征服王)
Edward the Confessor(エドワード懺悔王)
Richard the Lionheart(リチャード獅子心王、Couer de Lion)
Edward the Black Prince(黒太子エドワード)
Edward the Lawgiver(エドワード立法王)
Henry the Young King(ヘンリー若王)
John the Baptist(洗礼者ヨハネ)
Shaun the Sheep (羊のショーン)
Monty Python the Flying Circus

あるいは、前にきて

the poet Heine(詩人ハイネ)

フランス語でも。
Philippe le Long (フィリップ長身王:フィリップ五世)
Louis le Hutin  (ルイ喧嘩王:ルイ10世)
Philippe le Bel  (フィリップ美男王:フィリップ四世)


歴史上の重要人物に多い用法です。固有名詞とのこりの「the+名詞、形容詞」は同格で、その人物の特徴やあだ名つきでよぶときに使うようです。theの後ろの語の先頭が大文字なのも特徴です。

だからたぶん、つかうとしたら、Luffy the Straw Hatとか、Sanji the Black LegとかReilly the PlutoとかMarco the Phoenixとか・・・・たぶんだけど。


  King Arthur :
    What manner of man are you that can conjure up fire without flint or tinder?
    (火打ち石も火口もなく炎を出現させることのできる汝は何者か)
  Tim:
    I am an enchanter.
    (enchanter=魔法使い)
  King Arthur
    By what name are your known?
  Tim:
    There are some who call me,..... Tim.
  King Arthur
    Greeting Tim the Enchanter!

Monty Python and The Holy Grail, 英国映画



ちなみに、Alfred the Greatは英国アングロサクソン時代の実在の人物で、デーン人(バイキングのことね)の侵略と戦った英雄。ウイリアム征服王は、英国のアングロサクソン王家を倒してノルマン王朝をたてた、フランスのノルマンディー公ウイリアムのこと。そのウイリアム征服王に倒された最後のアングロサクソン王ヘラルドの父が、エドワード懺悔王。リチャード獅子心王はプランタジネット朝の英国王で、第3次十字軍としてイスラム勢力と戦った人。おかげでほとんど英国にいなかった。黒太子エドワードはエドワード三世の長男で、英仏百年戦争のCrecyの戦いでわずか16歳で武名を上げた戦士。名前は鎧の色から。即位前に死んじゃった。柩も真っ黒。洗礼者ヨハネはヨルダン川でキリストに洗礼を与えた預言者。

ちょっと意外なのが、ジョン失地王。John the Lacklandかと思ったら、John Lacklandらしい。Googleで2桁くらい差がつきます。

Edward the Confessorについてひとつ。(確認してないので、うわさばなしとして)どの本でもこれはエドワード懺悔王と訳されますが、実は誤訳なんだそうです。たしかに今の英語ではconfessorは懺悔する人、告白する人、という意味になるのですが、Edward the Confessorの時代のconfessorの意味は、神を賛美する人、というような意味だったらしい。ずいぶん違いますね。同じように「聖アウグスティヌスの告白」も誤訳だそうです。これが本当なら、まったく、翻訳家はたいへんだ。



ジョン王についての余計な話。

 世の中には国王はたくさんいて、領土を失った王様はくさるほどいるのに、なんでジョン王だけわざわざ失地王と呼ばれるのか不思議だったんですが、ジョン王がつらなるプランタジネット朝の歴史をしらべていてわかりました。

 プランタジネット王家はもともとフランス王国のアンジューを支配するフランス大貴族で、一時はフランス国王より大きな領土をもっていました。その支配は地中海からイングランドまでおよび、アンジュー帝国とよぶのにふさわしい規模でした。イングランドは、独立王国とはいえアンジュー帝国の中では植民地でありさほど重要でない辺境の地です。事実、ジョン王以前のプランタジネット王家の墓の多くはフランスにあります。フランスを本国とする一族なのだから当然です。
 しかし、その後のフランス国王との闘争のなかで、プランタジネット家は次々と領土を失っていきます。そしてついにジョン王のときにほぼ全てのフランス領をうしない、プランタジネット家は植民地イングランドに逼塞することになります。つまり、ジョン王は単にたくさんの海外領土を失った英国国王なのではなく、本国であり父祖の墓のある本領を失い植民地イングランドに逃げ出した男、というわけです。いってみればジョン王以降のプランタジネット朝英国王家は亡命政権みたいなもんです。

そりゃあ、失地王といわれ歴史に恥を晒されたのもしかたない。


さて、亡命政権ですから、なんとか本国に返り咲こうと画策します。プランタジネット家の失地回復運動が、あの名高い「英仏百年戦争」。言葉というのは怖いもので、こう書くとイングランド王国とフランス王国が闘った戦争みたいですが、その本質はフランス人同士の領土争いであり、イングランド人はこの事件にあまり関係ありません。むしろ、「英仏百年戦争」の歴史のなかでプランタジネットからフランス復帰願望がうすれていき、ついに本当のイングランド王家に変貌した、といっていいのじゃないでしょうか。つまり、現代の英国につながるイングランド人の王国は「英仏百年戦争」によって誕生したと。

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