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トレーニング方法などを少し・・・

ここでは、作者がどうやって外国語をトレーニングしてきたか、を紹介してみようと思います。本当は人様に何かを教えられるようなレベルではありませんが、やり方がわからず戸惑っている学生さんにはあるいは参考になるのかもしれませんので。


トロイの遺跡を発見したシュリーマンの言葉


・・・私はあらゆる言語の習得を容易にする一方法を発見した。
 この簡単な方法とはまずつぎのことにある。非常に多く音読すること、決して翻訳しないこと、毎日一時間あてること、つねに興味ある対象について作文を書くこと、これを教師の指導によって訂正すること、毎日直されたものを暗記して、つぎの時間に暗誦することである。
ハインリッヒ・シュリーマン 「古代への情熱」
(岩波文庫 村田数之亮訳)


シュリーマンという人物はまったく信用ならない、という説があります。そうかもしれませんが、上の方法は正当です。

index
基本の能書き

聞く

話す

語彙力

書く

文法のこと

文法のこと その2


論文を素早く書く手順

書き写す

速読と多読

聞くだけでできること

Kindleってどうよ。(2013年1月)


説教臭いコメントをだらだらと・・



基本の能書き
外国語勉強法のサイトは山のようにあり、方法もさまざまなものがあります。でも、共通するのは次のごく当たり前の事でしょう。 何をやるのか、は大した問題ではなく、その人にとって続けられる事が最適な方法です。

ひとつの問題は、「繰り返しやる」って何回やればいいのか、という事でしょうか。「何回もやる」といいますが、実は「何百回もやる。」必要があります。大変ですが、非Nativeである以上、これはもう仕方がありません。

詮ずるところ学問は、ただ年月長く倦まず怠らずして、はげみ務むるぞ肝要にて、まなびようはいかようにてもよかるべし。

本居宣長 「うひやまぶみ」
たかが外国語の練習ごときは学問じゃないけどね。でも、本居宣長ほどに人にこうも言い切ってもらえると、ちょっとほっとしませんか?


あるいは、こんなのも。
我々のギリシア語も一躍して大成することはできない。毎日の食事のごとくに、毎日の勉強が大切である。人間には食い溜めはできない。同時に喰わねば餓死するのみである。言葉の学習に於ても喰い溜めは結局消化不良を招いて中途に倒れねばならぬ。また使わねば人は己れの母語の言葉さへ忘れ去るであろう。毎日少しづつ。学習の多寡、遅速ではない。要は毎日勉強するか否かである。成否はこの一事に懸かる。

玉川直重 「新約聖書ギリシャ語独習」 友愛出版
(黒田龍之介「外国語の水曜日」から) 



聞く
  外国語を聞くトレーニングとしては、当然ながら「大量に、繰り返し、飽きるまで、そして飽きてからも、聞く」事を基本としてやっています。ついでに言うと、正確に聞きとれると「正しく話す」事ができますから、話す訓練でもあります。

通学や通勤などの時間に、CDの類をかけっばなしにするというのはとても良い方法です。いまならiPodですか。ただ、単に1枚のCDを流しっぱなしにする方法では、一つのフレーズを聞くのは1日にせいぜい数回で、記憶にとどめるのには不十分です。
  そこで、次のようなやり方で聞いています。教材のCDでは、たいていの場合、1トラックが30秒から1分程度のスキットか節に分かれていますから、1日に1スキットだけをiPodのオートリピートで繰り返し聞いています。テキストはまったく見ません。通勤時間が片道1時間あるとすると、1日で100回以上1つのスキットを聞く事になります。うんざりしますが、うまくいけば、帰りのころにはスキットの細部までが単なる音ではなく言葉として聞こえるようになるかもしれません。本当にうんざりしますが。
  運悪く2,3日聞いてもちっとも聞こえてこない時は、さっさと別なスキットに移ります。さらに運悪く、どのスキットでもちっとも分からない時は、教材が悪いんです。他のを買いましょう。

シャドーイング
  同じフレーズを聞くのに飽きてきたら、「シャドーイング」をやってみたりもします。これは、聞こえてくる音だけを頼りに、その文を発音する事です。ただし聞いた後に音を止めてからリピートするのではなく、同時通訳のように聞こえてくる音からほんの少し遅れるくらいで発音していきます。聞きながら同時に発音するので大変そうですが、本当に飽きるほど聞いた後なら、ある程度はできてしまいます。ただし、ただ音を機械的になんとなくまねするのではなく、冠詞や前置詞、時制など文法も正確であるように注意しましょう。そうすることで、聞き流す事では分からなかった細かい点が、分かってきます。つまり、文法を考えたらここは前置詞かなにかがはいらなくちゃいけないのに、聞く分には聞こえないな、とか、リスニングの穴がわかってきたりします。

 もっとも、通勤途中でやるなら、人に聞かれないようにしたほうがいいですね。いまどきは通報されそうです。


リスニングのトレーニングでは、(外ですから当然ですが)テキストはつかっていません。テキストを目で追いながらただ音を聞く、というありがちな手法は、役には立たないと思っています。



以下の教材のCDをメインに使っていました。

「イギリス英語を愉しく学ぶ」 小林章夫・ドミニク・チータム著 ベレ出版
「イギリス英語を愉しく聞く」 小林章夫・ドミニク・チータム著 ベレ出版

2,3人のNativeの会話が中心で、1つのスキットが1,2分程度。繰り返し聞くにはちょうど良い長さです。 旅行ではなく、海外で生活したときに実際に体験しそうな会話が多いので、その意味でも役にたちそうです。



ディクテーション

 最後に、効果は間違いなくあるのですが、しんどいので最近は全然やっていない方法を。
デイクテーション(書き取り)です。やり方は単純で、CDで短めのスキットを選んで、音だけをたよりに書き取っていくだけです。当然、テキストは見てはいけません。自分なりに完全に書きとれるまで、何十回でも聞き直します。ただし、単に音を文字にするだけではだめで、冠詞、前置詞、時制、単複、単語のスペルなどにも間違いがないようにします。
  デイクテーションをやると、普段、あいまいに聞きとれた気分になっているだけで、いかに聞き取れていないか、いかにブロークンに聞いていたが、良く分かります。また、デイクテーションはリスニングに非常に効果があるだけでなく、話す力も格段に向上します。何語であってもその効果は保証できます。保証できますが、でも、とにかく疲れます。一回やるとへとへとになるので、今はやっていません。   






話す
「聞く」トレーニングの延長で、CDさんざん聞き込んだあと、音読をしました。このとき、ただテキストを読むのではなく、CDの音に合わせて同じスピードで読んでみました。やってみれば分かりますが、Nativeと同じスピードで読むには、リエゾンはもちろん発音やイントネーションまで同じにしないと追いつきません。なんとか口がうまく動くなるようになれば、そのスキットは完成という気がしてきます。(もちろん錯覚です。2,3日すれば木阿弥です。)。また大昔から言われている事ですが、何かを身に付けるには音読が一番効果的です。これはもう間違いありません。


  内容をその場で組み立てるトレーニングとして、シミュレーションをしています。たとえば、街を歩きながら、ここで道を聞かれたらどう答えるようか、とか、街の歴史を説明するとしたらどういうか、といった事を考え、答えを外国語で具体的に作ります。もっと建設的には、自分の研究を外国語で手短に説明するにはどう言えばいいか、昨日とれたデータの意味と価値を説明するにはどうしたらいいか、を細部まで考えます。
  一度も考えたことのない事柄を突然外国語で説明するのは不可能です。さらに、漠然としたイメージだけでは、外国語で正確な説明をする事はできません。冠詞、前置詞にいたるまでよく考えます。全ては無理でしょうが、せめて自己紹介と専門の説明くらいは、いつでもつるつるっと出てくるようにしておきましょう。
後で本かなにかで答えあわせをできればさらに効果的でしょうが、まあ無理にする事はありません。

現実のしのぎ技として、得意フレーズを持つのも余裕を保つのに役にたちます。
  It is important to ~
とか
  I suppose that~

  This means that~

  I would like to~
とか、パターンを身につけておくと、これを口に出している間に、次に言う肝心のフレーズを考える時間がほんの少しできて、慌てずにすみます。特にオーラル発表の場合、第一声のフレーズを決めておくと、スムーズに滑り出せるようです。私の場合は、

  What I would like to talk today is one of the most interesting problems; *******


あるいは、まだ全然言葉を思いつかなくて困っているかもしれません。その場合は、読む量を増やす事をお勧めします。外国語の場合、聞く力も話す力も、読む力に支えられています。読んで分からない文を耳で聞いても理解できないし、読んだことのないフレーズを口からだす事はできないからです。小説や科学書など、よむ気になるものなら何でもかまいません。内容をよく知っているものがよいでしょう。なぜならそれを読む場合に、内容よりも言葉、文章に気をつけて読み進める事ができるからです。

もちろん論文をたくさん読んでいるのですから、それで大丈夫かと思いますが、実は論文はくせ者です。Nativeが書いているわけではなく、正しい英語である保証が弱いからです。物理系の場合、ほとんどの雑誌では英語校閲をしてくれません。



でも、「話す」場面でもっとも苦労するのが、食事時やティータイムの雑談でしょう。サイエンスに直結する議論なら困らなくても、雑談はつらいものです。おもしろいジョークのひとつもいわなくちゃいけないし。日本人相手でも初対面の人と楽しく話すのは難しいのに。
外国人との雑談をしのぐのにどうしたらいいか、正直私もよくわからないのですが、たとえば、普段から外国人相手用のネタを仕入れておくのはどうでしょうか。映画、スポーツ、日本の歴史、日本語の不思議、なんでもいいのですが、何か得意な話題を英語で作っておいて、こっちから話題をふってしまえば、あまり慌てずにすみます。私は映画とスポーツをよく使います。学生さんの場合、同じ外国人に何度も会う可能性はあまりありませんから、ネタは一つだけで十分です。何度もあうのは友達ですから、やはりネタの心配はいらないでしょう?


なにかを為したいと思うものは、まずなによりも先に、準備に専念することが必要だ。 機会の訪れを待っての準備開始では、もう遅い。
マキアベッリ「戦略論」(塩野七生訳)





一番大事で、かつ間違いなく効き目がある方法

大きな声で話す。聞き返されたら、もっとでかい声をだす。



語彙力
大昔に人からおそわって、だめもとでやってみたら結構よかった方法を。
ただし即効性はありません。つまり、短時間で大量に憶えるのには効きません。そもそもそんな方法ないし。
むしろ、言葉の意味を深くしっかり捉えることができる方法です。本読みには最適かも。

やり方はこんなです。
気に入ってる翻訳小説の原著、物理的な内容はよく理解している論文なんかを用意します。原著で読んでればベスト。

1:印象に残っているシーンや段落をコピーして、ノートの左側にはります。(左右はどうでもいいいんだけどね) 
2:読んでみて、意味がすぱっとわからない単語にマーカーでマークしていきます。
3:次にノートの右側にマークした単語を書き、その文章での意味だけを書いておきます。自動詞だったら単語だけでなく前置詞も書いておいた方がいいかも。ここまでが準備。
4:そしたら、右側のページの単語を見ながら、作品のシーンや、どんな文章に書かれていたかを思い出してみます。別に左ページの原文をみてもかまいませんし、見ないでやってもいいでしょう。
5:これを日ごろから繰り返して、単語をみたらシーンや文章を思い出せるようになるまでやります。

この方法は、言葉の雰囲気とか使われる場面のように、単語と状況と結びつけるのが目的です。かなり悠長な方法ですが、しっかりと言葉を理解した気になります。いってみれば文章を丸暗記するみたいな方法ですけど、文章とかシーンを憶えるのは案外楽です。少なくとも本読みには苦にはならないでしょう。普段あんまり本を読まない人には、きびしいかな?


状況と単語を結びつけるこのような方法が意味があるのは、外国語と日本語の意味は一対一対応ではないからです。「abandon」=「あきらめる」とだけ憶えてよしとするわけにはいきません。(例が古すぎるかな) たとえば、「Good morning」=「おはよう」とだけ憶えていると、朝いちの英国人ボスとの打ち合わせとかで、すげえびっくりすることになります。打ち合わせ終了時の別れ際の挨拶に使いますから。日本語なら「それじゃあ、その線でよろしくたのむよ。」とかのタイミングかな。
だから、言葉の意味を覚えるのではなく、その言葉の使われる雰囲気や状況を捕まえる必要があります。様々な状況で様々な使われ方をするので、結局、その様々な状況を身に付けるのが確実です。


一方、定番中の定番であるカードを使うやり方は、一度覚えた単語を忘れないようにするのにはたいへん効果的と思います。



発音
発音は重要ですが、発音矯正の個人レッスンでもうけないかぎり、完璧にするのは無理でしょう。でも、イントネーションやアクセントを正しく身に付ける事は、完璧な発音を身に付けるよりは簡単ですし、それだけでも相手に正しく伝わる可能性がぐんと上がります。 私には以下のテキストがよかったと思ってます。
  「イギリス英語を愉しく聞く ----リスニングテキスト」CD付
   小林章夫&ドミニクチータム、ベレ出版 1700円

テキストのコンセプトよりも、第1章のナーサリーライム(日本でいうマザーグース)が気に入っています。英語にも日本語の七五調のようなお約束のリズムがある事がよく分かります。言葉のリズム、イントネーションのトレーニングには最近では一番効果があるように思っています。同じリズム・イントネーションにするには、できるだけ正確に発音しないとうまくいきませんから、発音の良いトレーニングのじゃないかと思っています。また、この本の本文にもあるように、英国人の子供がナーサリーライムのリズムとともに言葉を身に付け育っていくとしたら、ナーサリーライムのリズムになじむことで、Nativeに近づけるかもしれません。とりあえずナーサリーライムを知っていると、英国人がとの話のネタになります。


口頭発表で注意したい事のひとつに、カタカナ語があります。重要な単語がカタカナ語として耳慣れている場合、発音が全く間違っている場合が結構あります。 たとえば、元素のGeは、日本語なら「ゲルマニウム」ですが、英語だと、(無理に書くとすると)「ジャーマニウム」「ジャーマン」に近い音になります。当然ながら、自分の試料名が伝わらなければ、発表どころではありません。普段カタカナで使っている言葉は、かならず辞書で正しい発音とアクセント位置を確認しましょう。絶対に、です。間違った発音、イントネーションの物質名は、まず通じません。



書く
トレーニングではありませんが、出版されている例文集の類いは、私が英文を書く際には、次のように使っています。

  論文で最も重要な事は、サイエンスと論理ですから、最初は同じフレーズや同じ単語の繰り返しになっても気にせずに書き進めます。たとえば、「しかし」はすべてHoweverになっても気にしません。で、構成と論理が完成したら、(ここで投稿してもいいのですが)、言葉を磨く作業に入ります。原稿ができた状態であらためて論文の参考書、例文集などを1,2冊読みかえして、自分の論文で使えるフレーズを探します。書き上げた直後は自分の論文のすみずみまで頭にはいっていますから、例文集から役にたつフレーズを見つけるのは簡単です。見つけたフレーズを自分の論文の文と交換して、同じフレーズや単語の繰り返しを減らしていく事ができます。また、よりよい表現を見つけることもできるでしょう。

  さらに、その論文をよくするだけでなく、実際に論文に使ってみる事で、例文集のフレーズや単語を自分のものにしやすくなります。論文を書いていないときに漠然と例文集をぱらぱらみていても、なかなか役にはたちません。
  
  文法チェックは、たとえば、動詞の人称と時制だけに注意して読み返してみる、冠詞だけに注意して読み返してみる、という事をやっています。ただし、いくらやっても際限なくミスがみつかりますから、どこかでなげださないといけません。


ありがちな方法

英語の日記をつけるとよい、といろいろな人が書いています。2003年秋には数学者のピーターフランクルが英語勉強法の本(岩波ジュニア)を書いていて、英語日記の書き方をレベルに合わせて詳しく解説しています。その効力はまちがいないようですから、やってみる価値はあります。ただし、私はやった事がありませんし、やる気もありません。



文法の事
ネット上の英語学習のサイトでは、文法は必要かどうかでいつも激論が行われていて、どちらかというと不要論の方が有利のようです。
 その議論は正しいと思います。しかし、プロの研究者の仕事としては、文法の間違いはできる限り少なくしないといけないと思っています。日本語でも、学術的な文章にも関わらず誤字脱字、主語述語の不一致が多かったら、読み手はその著者の知性と真剣さを疑い、最後まで読んではもらえないでしょう。果てはデータを信じてもらえなくなるかもしれません。「正しい知的な文章」を書くためには文法上の正しさは最低限の条件で、この意味で、文法知識は研究者には必要です。


さて、いざ文法を勉強しようとしても、良い方法は案外思いつかないかもしれません。 私は、英語を書く話す力をつけるのに必要な文法の勉強として、以下の本を使いました。

「話すための英文法」中級編;市橋敬三 (研究社出版)

この本の特徴は、文法項目一つに対して10こ程度の簡単な内容の例文があり、それを徹底的に覚える、という乱暴な方法をとっている事です。つまり、「三人称単数現在の場合は、規則動詞にsがつく。」なんて呪文を覚えるのではなく、
   I go to school. She goes to school. They go to school.
といった英文を身に付けて、Heと始まったら、考えなくてもgoではなくgoesがでるようにする、という手法です。こういう形で身につけておけば、論文を書く際に、主語を書いた時点で動詞に意識がいくので、文法的不一致を減らす事ができます。私は効果がありました。また、本のタイトルどおり、会話でも間違いが減りました。見た目はかなり地味な本ですが、私はお勧めできます。また、いまはあるかどうかしりませんが、大学受験の駿台がだしていてた「基本英文700選」も、同じ意味で実用文法に適しています。実用に。


もうひとつ、中級向けのテキストを推薦します。
"English Grammer in Use" , Murphy, Cambridge出版
非英語圏の学生、教師向けに文法の基礎を教える目的で英国で出版された本で、当然全部英語です。英語で英語の勉強をする事になります。
この本の序文に次の様に書いてあります。
この本は次のような人のために書かれた本です。
○ I have to do.とI must do.の違いのわからない人
○ I will do.とI am going to do.の使い分けが分からない人
○ I did.とI have done.の違いが分からない人
この序文でも分かるように、文法項目を説明するのではなく、I must do.とI have to do.の違い、「月曜日まで」でBy MondayとUntil Mondayの違い、Although, evern though, in spite ofの違い、といった初心者には分かりにくい区別を、見開き2ページで一つつつ説明していく方式です。
私にはぴったりでした。読みたくなりませんか?
 全部英語じゃそりゃ無理だと思うかもしれませんが、始めから非Native用の初級教科書として書かれているので、説明をよむのには苦労はありませんし、1項目が2ページと短いので読み物として楽しめます。私の印象ですが、英国で出版されている英語のテキストはだいたいどれもとてもよく出来ていて、初心者であっても、あるいは初心者だからこそレベルアップにやくにたちます。


あるいは、あなたが大学受験時代に使っていた英語の参考書、文法書を、英語を実際に使うはめになった今読み直すと、きっと新しい発見があります。あの頃、あまりの無味乾燥にうんざりしていたはずの文法が、実に便利で役にたつものである事に気づくかもしれません。こんなややこしい事を、よくきちんと整理してくれていたなあ、と。そう、文法は便利なんです。



少し毛色の違う、本読みむきのお気楽な方法として、何回か読んでいて内容を知っている英語小説を、冠詞や前置詞に注意して読み直す、という事をよくやりました。読みながら、なんでここはaなんだ、なんでtheじゃいけないんだ、とか考えて、その理由をこじつけていきます。面倒くさそうですが、ちょっとした謎解きみたいで楽しいものですから、意外に早く冠詞への抵抗感が無くなりました。なんにでも、なんでだろう、と考えてしまうのは理系の性でしょうか。このやり方は論文でも別にいいのですが、著者がNativeとはかぎらないので、注意が必要です。



文法の事 その2
文法是非論というのは、際限なく繰り返されています。最近の会話重視の傾向のなかでは、文法肯定派は不利になっているかもしれません。

しかし、是非という対立の構図は、私には奇妙に思えます。ある言語を学習しようとするとき、その言語の文法というのは、いわば初めて訪れた街の地図のようなものだと思うからです。

旅先で初めて訪れた街で、地図をもたずにひたすら歩き回るのは楽しいものです。さんざん道に迷った後には、様々な顔に出会い、街の隅々まで理解できているでしょう。時間はかかるでしょうけれど。裏通りの思わぬ名店を見つけるかもしれませんし。その街を旅した想い出はしっかりと残るでしょう。
しかし、クライアントとのミーティングが目的で訪れた街で、そんなことをやるわけにはいきません。遅刻しちゃいます。だから地図をみます。地図を見ながら進めば、目的地に最短時間でたどりつける確実な道がすぐにわかります。裏通りにあるすてきな何かには出会えないし。その街全体の印象もたいしてのこらないかもしれませんが、でももっとも重要な目的を確実に楽に達成することができます。


あるいは、文法は、機器のマニュアルのようなものかもしれません。機械に強い人は、マニュアルなしで新しい機械をあれこれいじり回しているうちに、裏技までも自分でみつけて使いこなすようになるかもしれません。でも、大多数の人にとっては、機械を早く正確に使うには、マニュアルを読むのが一番手っ取り早く安全で確実です。基本的な使い方に限られてしまうにせよ、仕事にはそれで十分。


文法勉強は不要、ひたすらその言葉に触れることが大事、という方法は、前者の地図無しの旅に相当するでしょう。確かに楽しいし、しっかりとした知識が見につき、それは時間がたってもけして失われません。でも、仕事に必要な場合はそんな悠長なことはいっていられず、いますぐ正しい結果をださないといけませんから、この方法は有効ではありません。

是非論のようにどちらの方法がいいかという問題ではありません。どちらもメリットデメリットがあり、本人が選べばいいだけのことです。でも、多忙な社会人にとっては、便利な手引きツールである文法がちゃんと準備されている以上、それを利用しない手はないでしょう。そう、文法は便利です。



論文を素早く書く手順
あるえらい先生から、論文を早く的確に書くアドバイスをいただきました。実際にやってみると、確かにすっきりとした論文をいつもよりずっと早く書く事ができましたので、ここで紹介します。別に特別な事ではなく、論文を書く前に、構成をほぼ完璧に構築しておく、という当たり前の事です。具体的には、

(1) まず、論文に使うグラフ、表、図を、そのまま論文に載せられるレベルまで作りこむ。
(2) Captionも論文に使えるレベルのものを日本語で書く。英語でもいいけど。
(3) タイトル、アブストラクトもできるだけ完成させる。
(4) つくった図をもとに、論文の段落単位でごく短い要約(日本語)を、イントロから結論まで全部書く。
(5) 必要なら、段落の要約を並べ替えて、一番いい論理展開をくみたてる。
(6) 段落単位まで考えた構成ができたら、図とともに共同研究者にみせて、議論する。

実際にやってみて分かったのですが、この方法で一番大事なのは(1)です。どれだけいい図をつくれるかで、後の過程にかかる時間がぜんぜん違います。

さて、(6)で共同研究者の同意をえられれば、あとは肉付けして、英語化するだけです。英語化は簡単とはいいませんが、サイエンスの構成を考えるのに比べればはるかに簡単ですし、失敗しても大した事はありません。

(5)の段階は、紙のカードを使ってもいいと思いますが、今回はPowerPointを使ってみました。1段落を1スライドにして、全体像を眺めながら構成を考えたのですが、案外やりやすいようです。図を張り込む事も簡単にできますし。

論文を書くのに、この方法は有効です。



効果未確認だけど・・・ 書きうつす。
ちょっと気づいた方法です。
文章を書きうつすのは、もしかしたら有効な方法かもしれません。

ある小説をよんでいていまひとつ文章が理解できなかったので、いっそ翻訳ソフトにかけてやれと思いeditorに打ち込んでみました。そうしたら、翻訳ソフトにかけるまでもなく文章の構造が見えてきて、意味がとれるようになりました。
理由はよくわかりませんが、打ち込むスピードは黙読するスピードよりずっと遅いので、理解が追随できるのかもしれません。1単語ごとに意識しますから、「あ、ここでso thatがでた」とか「さっきは冠詞がなかったのにここはtheがついている」とか、細かく認識していけます。

何回かやってみましたが、良い感じです。


これ書いて思い出したことがひとつ。
高校生のころ、英語がものすごくきらいで、教師に脅されてもやりたくなくて、それでも期末とかの試験勉強はやらなくちゃいけなくて、あるときに苦し紛れでやったのが、教科書まるうつし。
カンニング準備じゃないですよ。試験範囲になっている教科書の文章をただひたすら書き写してました。何回も何回も。そしたら、そのときの試験は、自分としてはすごくできがよかったのを憶えています。それ以来、高校時代の英語の勉強はまる写しだけでした。卒業後はつづかなかったけど。


おまけの効果
ある小説で意味をとりきれない場面のファイルをハードディスクにいれておいて、しばらくたって眺め直してみたら、その場面の情景(意味ではなく)がすっと分かってしまいました。あんまりあっさり分かってしまって、不思議なほどです。情景が分かってしまえば、意味を想像するのは簡単簡単。

さらに、おまけの効果
ハードディスクにいれるのは気に入ってる場面ですから、なんとなくときどき取り出して眺めてたりしています。忘れた単語を辞書でちょこっと調べたりもして。で、そうしているうちに、すっかり覚えてしまいました。といっても、文章を暗記したというよりは、文の構造を細部まで理解できたって感じです。その文体は、もうリアルな映像つきで思い出す事ができるわけですから、ここまでくると後は単語をいれかえるだけで自分のものとして使うことができそうです。



速読と精読
これは、小説のようにかなり長いものを読むときの話です。外国語の訓練として小説を読むとき、速読と精読のどちらを重視すべきか、という問題の立て方がありますが、当たり前ですがどちらも必要です。目的が違うから。

速読は、外国語文章のイメージを短時間でつかみ、そのエッセンスを自分のものにする作業で、日本語を介さずに雰囲気を把握する訓練です。主人公の発言のおおまかな意味や、その行動のおおざっぱなイメージを捕まえられれば十分で、後方の風景がぼけていてもかまいません。そのため、本質的な主張にあまり影響のない副詞などは全部すっとばしてても構いません。時制もだいたい無視できます。形容詞は案外大事です。

一方、精読は、そこに書いてあることをすみずみまで完全に理解することで、外国語の構造を深く正確に理解する訓練です。例えばある人物の外見の説明なら、その服装の細部まで頭に描けるようになることですし、主人公がだれかと話しているとき、その後方の風景や風まで捕まえることです。それには、全部の単語の意味、文法、語法、慣用句、引用を全部理解する必要があります。時間がかかりますが、小説を楽しむにはこの細部の理解が必要ですね。すぐれた作品ほど、細部が重要ですから。英国人作家シャーロットマクラウドの作品をよく読みますが、古典文学の引用が説明なしでいきなり、しかも頻繁にでてきて、かつ重要なヒントだったりしますから、かなりとまどいます。


(ここでの説明とぜんぜん関係ないですが、シャーロットマクラウドの推理小説で、真相解明のクライマックスにフランス語で書かれた手紙をフランス語のまま読み上げるシーンが3ページ続き、しかもその手紙に事件の真相がかいてある、という作品がありました。読み終わったら事件は解決していて、フランス語のわからない人は真相がわからないという鬼のような作品です。)


論文をよむときは別な意味があります。論文を読むときはまずは速読、あるいは飛ばし読みです。それは、たくさん論文をチェックしてその重要度を判断し、深く読み込む必要のある論文を選び出す作業です。で、重要な論文をみつけたら、その主張のロジックを細部までしっかり理解し、その論文が正しいか間違っているか、本当に重要か実は無意味かを判断します。論文だからって無条件に正しいわけではありませんし、たとえ正しくても重要とはかぎりません。


いずれの場合でも、日本語に翻訳する必要はないと思います。理解することと日本語に翻訳することは別で、 前者の方がはるかに大変です。日本語に訳せたからって理解したことにはなりませんが、理解したのならわざわざ日本語に訳す必要はありません。本を「読む」のは「理解する」あるいは「楽しむ」のが目的なのですから、翻訳家を目指す人以外は訳は時間の無駄です。ただし、論文を読み慣れていない学生さんの場合、まず訳してしまってから物理を考えたほうがよい場合もあるでしょう。



聞くだけぇ?
「ひたすら聞くだけ」って練習法は、効率はひどく悪いけど、宝探しの探検みたいで結構楽しい、というお話。

実はイタリア語がほんの少しできます。

イタリア語を勉強したとき、ひとつの実験として「聞くだけ」でやってみました。英国で買った英国人むけイタリア語のカセット(時代だあ)をひたすら聞くだけで、文字は一切見ないというやり方です。初心者むけでイタリア旅行を前提とした設定で、各セクションの最初に「喫茶店に入りましょう。」とか「ホテルのフロントです。」とか短い説明が英語であって、あとは全部イタリア語だけ、というカセットでした。もちろんその段階では、まったくイタリア語はできませんでした。

そんなの全然わからんだろ、と思うでしょ?もちろん分からないのですが、全然ってことはありません。たとえば。喫茶店やレストランでのシーンで

「なんとかかんとか カッフェ ぺるふぁぼーれ」とか「なんとか パスタ ぺるふぁぼーれ」とか「なんとか ビッラ ぺるふぁぼーれ」

なんてのが沢山でてきます。正確な意味はもちろん分からないけれど、ここで想像してみます。喫茶店やレストランなんですから、カッフェはたぶんコーヒーでしょう。パスタはきっとパスタです。ビッラはなんだかわからないけど、コーヒー、パスタときているんだから、喫茶店やレストランのメニューにでているものでしょう。するってえと、後ろにかならずついてる「ぺるふぁぼーれ」は「please」でないべか、って気づきます。そう思って他のところを聞くと、例えば市場で買い物するシーンで頻繁に「ぺるふぁぼーれ」がでてきたので、これは間違いない、と判断できました。これで言葉がひとつ分かりました。そうなると逆に、「ぺるふぁぼーれ」がでてきたら、何か頼んだりしているシーンじゃないかな、って考えることができます。市場で「なんとか ぺるふぁぼーれ」ってきたら、その前の「なんとか」は多分商品の名前だろう、とかね。


その想像がまちがってたらどうするんだ、って思うかもしれませんが、でもイタリア語で1人で遊んでるだけですから、間違ってたってどうということもありません。イタリア語ができなくたっていっこも困らないし。英語ができないとこまるぞ、っていうかもしれませんが、それでもやっぱり英語よりもサイエンスです。英語ができないことは恥ではありません。できるとかなり便利なだけです。

さて、次に気づいたのが、「なんとか パスタ ぺるふぁぼーれ」の「なんとか」のところ。たとえば「うな パスタ」とか「うん カッフェ」とかとかそんな感じの言葉がつきます。頼むものが変わるとちょっと変わりますけど、わりと似た感じの音です。いろいろ聞いていると、いろんなシーンでかなりの確率で物の前に似た音がつくのに気づきます。ぜんたいヨーロッパ言語では英語と違ってほぼ確実に名詞に冠詞がつくので、この「うん」や「うな」は冠詞、それも不定冠詞で、英語の「a」ではないかな、って想像できます。「a」と「うん」なら音としても少し近いしね。

こんな調子でちょっとつつ、想像を重ねていきました。カセットの話は進んで、ホテルのフロントで、部屋はないか、と聞くシーンがでてきました。「うな カメラ ぺるふぁぼーれ」とかなんとか。「うな」が不定冠詞aで、「ぺるふぁぼーれ」がpleaseだとしたら、「かめら」が何か分かればいい。初心者むけのイタリア語コースで、ホトルのフロントで聞いてるんだから、イラク問題やサブプライムローン問題なわけもなく、ホテルのフロントで聞きそうな言葉に決まっています。その状況で一番単純な質問はたぶん「部屋はありますか?」の類いでしょう。そう思うと、イタリア語の「かめら」はホテルの部屋でないか、って想像できます。

ここまで考えて、ひとつ思い出したことがありました。英国のオックスフォード大には「ラドクリフ カメラ」という、大きな教室というかホールがあります。この建物を初めてみたとき、なんで建物をカメラっていうんだろうと不思議に思ったことです。でも、仮にラテン語で建物をカメラとよぶとしたら、イタリア語がラテン語の直系の子孫であることを考えれば、「かめら」が建物に関係する言葉だっていうのは間違いないはずです。そこまできてやっと、写真をとるカメラの語源は「暗室」からきているって豆知識を思い出しました。なので、やっぱり「かめら」は部屋だ、と確信しました。それから伊日辞書で調べてみてやっぱり「かめら(camera)」は「部屋」なのが確認できたときは、 ちょっとした謎をといた気分でかなりうれしかったのを憶えています。自分の知識の複数のピースがびたっとあう瞬間です。

こうやって身につけた言葉やルールは、まあまず忘れません。ただ、ここまでくるのに1年くらいかかったと思います。最初から辞書ひけば10秒ですむんですから、効率はひどく悪いですね。だから勧めませんが、でもかなり面白い知的な冒険です。

最近(2008年1月)、同じやり方で韓国語の冒険を始めました。韓国語ができるようになるのは、まあ2年後かな。



Kindleはいいかもしれない
2012年12月にKindle paperwhiteを購入しました。これはいいかもしれない。

人によりますが、外国語をマスターするいちばんの近道は本を読む事だと思っています。聞く力も話す力も、一番効率よく身につきます。で、Kndle。
内部に米語辞書、英語辞書がデフォルトではいっていて、わからない単語は画面にふれるだけでそく辞書で調べられます。だから読むリズムがくずれずにすみ、イメージが継続できます。これが大事。本を読むとき、意味をこまごまおうのでなくイメージを捕まえるのが目的。よく、「読むのは大丈夫だけど・・・」と簡単にいう人がいますけれど、それって単に辞書で意味を見つけられる、ってことだったりします。そうではなくて、日本語の本と同様にイメージを頭に描けることを、読む、といいます。 それを積み重ねていくと、耳もよくなるし、思った事をその言葉ではなせるようになります。だから、外国語をマスターするのに読書は有効だし、それにはKindleはおすすめ。

しかも、洋書が安い!。絶版になって古書でプレミアがついて2000円くらいする本が100円でうってました。古典は無料だし。

[接続詞][副詞][前置詞][動詞] [類義語][冠詞][時制][関係代名詞][分詞構文][比較][否定][典型文][文章][参考書]
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説教臭いコメントをだらだらと・・・


必要な勉強量
ある言語教育学の本で、どの言語でも、人が生まれてからある程度複雑な構造を持った文章を話す事ができるようになるまでには、約5000時間その言語に触れている必要がある、とありました。「ある程度複雑な構造」がどんなものかは分かりませんが、言語教育学ではひとつのゴールを意味するのでしょう。さて、大人は幼児に比べれば大量の予備知識と論理的思考能力を持っていますから、必要時間は1000時間〜2000時間程度に短縮されるとか。従ってアルク出版のヒアリングマラソンは理屈にあっている事になりそうです。
しかし、1日1時間程度勉強するとして、1年で300時間強ですから、2000時間に達するには約6年かかる事になります。

毎日かかさず1時間、それを6年。しかも幼児が母親とお話するのと同じ程度の熱意と集中力をもって。まったく、外国語学習は大変です。 そんな事にエネルギーを割くよりも、サイエンスの勉強に力を注ぐべきだ、というのはまったく正しい考え方です。

(商業的教材で、「赤ちゃんが言葉を学ぶように学べばよい」というコピーを頻繁に、ほんとうに頻繁にみかけますが、上の計算を考えると、成人がやるにはあまり効率の良い方法ではなさそうです。赤ちゃんにはむいているのでしょうけれど。)
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Speakingについて、目標とするレベル
多くの英語学習法でよく次のように言われています。

「かたことでもいい。単語を並べるだけでもいい。とにかく話す事が大切だ。」

通常の会話を成立させるには、この事は完全に正しいと思います。しかし、研究者が仕事をするにはそれでは足りません。日本語であれ外国語であれ、自分の研究の説明をする場合は、正確で論理的で厳密で説得力がなければいけません。
何語であれ、かたことの下品な言葉での説明では、自分の研究の正しさを他人に評価してもらう事は不可能です。研究者は忙しく、聞きにくい耳障りなあなたの話をまじめに聞かなければならない理由はありません。

従って、それが日本語であろうと英語であろうとその他の言葉であろうと、自らの研究の価値にふさわしい緻密で知的な説明をすることが、研究者として最低限必要だと思っています。たとえ言葉としてたどたどしくても、あるいは発音が悪かったとしても、緻密で知的である事は可能です。大げさにいえば、世界中の教養ある知識人、研究者の尊敬を勝ちえるだけの研究成果にふさわしい品と力をつける事を目標とすべきでしょう。まさに一生ものの努力が必要です。もちろんサイエンスが空っぽなら、なんの意味もありませんが。


発音についてのなげやりなぶつぶつぶつ
発音が正しくないとまったく通じない事があるのは本当です。また、間違った発音が一度身に付くと、矯正するのはとても大変だ、という事もたぶん本当でしょう。ですから、ネットでの英語教育の議論では、英語の勉強の第一段階、Speakingのトレーニングの前に、Nativeの教師について正しい発音の訓練を徹底的に行うべき、と言われています。
まあそうかもしれませんが、たいていの場合そんな事は無理でしょうから、この論は無意味だと思います。でも個人的には努力はつづけた方がいいでしょう。ノーベル賞受賞者クラスの大物の発表でないかぎり、くそ忙しい研究者たちは、もしも意味のとれない発音だったら、私の講演をまじめに聞いてはくれないでしょうから。


私の中高生時代(1970年代)では、難しい発音としてRやthを強調していた記憶があります。でも、実際につかうよになった今の実感としては、本当に難しいのは、L, T, B,Pです。Rは日本のラ行の音でだいたい代用できますが、Lはよほど力をいれないと舌がうごきません。ですから、よく聞く日本人の失敗として「日本人はliceを食べる」と口走って英米人にぎょっとされる、という話を、私はまったく、ほんとにまったく信じていません。作り話です。むしろ逆で、大統領選挙の話をしていてelection(選挙)をerectionと発音してしまう方が十分ありえます。女性の前で、今の選挙はexcitingだ、なんてうかつにいったら、ひどいことになるかもしれません。
また、T,B,Pは簡単そうなだけにかえって鬼門です。英国でのT,B,P音は日本語のタ行、バ行、パ行の音とはずいぶん異なります。少なくとも私にはいくら頑張ってもPaddingtonのPはまねできません。言語学的にもPとパ行音にははっきりと区別があるという事を聞いた覚えがあります。


余計なお話
日本人の発音が意外なほど通じない一例。
知人が英国に出張した際、地方からロンドンに列車でもどろうとして、駅の窓口でロンドン行きの切符を買おうとしたのですが、「ロンドン」がまったく通じなかったそうです。たぶんRondonと発音していたのでしょう。駅で外国人が聞いているんだからLondonと分かりそうなものだ、とも思いますが、通じないものは通じません。もっとも、英国には「ロンドン駅」なる駅が存在しない、という事もありますが。


余計なお話2
thの発音のごまかし方

thを正しく発音できないなら、zではなくせめてdで発音しましょう。英米の小説などで、フランス訛りの英語を文字で表現する場合、thをdで表記する場合が結構あります。「dis is」「dat is」などなど。フランス訛りにはおそらくそんな雰囲気があるのでしょう。ハリウッド映画とかみていると、どうもアメリカ人はフランス風に弱いところがあるようなので、舌を噛むthの発音が難しいなら、dですませてやりましょう。
「赤毛のアン」シリーズで、アボンリーにすむ農民でthを全部dで発音する人物が登場します。きっとフランス系移民なんでしょう。

ついでにいうと、thをfにするとコックニー風だそうです。fank you.とか。


fankからの連想でさらに脱線して一言。日本人はファックスの事をFAXとは発音しない方がよさそうです。facsimileといいましょう。なぜなら、日本人発音のファックスはf○ckと響く危険性があるからです。英米人女性の前で言うと訴えられるかもしれません。FAQ(良くある質問)も迂闊に発音しないように。


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イントネーション
日本語は、ヨーロッパ言語と比べてイントネーションを必要としない言語のようです。ですから、ヨーロッパ言語を話すときに、どうしても平板になってしまい、Nativeには理解しにくいものになってしまうと聞きました。ですから逆に、ヨーロッパ言語を話す時は、イントネーションを強く意識して、重要な単語は恥ずかしいくらい抑揚をつけ大きな声で発音するといいようです。私の体験では、イントネーションをつける単語のところで少しスピードを落として、長く延ばして発音すると強調しやすいようです。
同様に各単語のアクセントもとても重要です。口頭発表の前には、全部の単語、特に試料名のアクセントをチェックしておきましょう。カタカナで読んでいるときとは、アクセントが全然ちがいます。
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英語で書くか、日本語でまず書くか
ほとんどの教科書で、「論文を書く場合は、日本語から訳すのではなく、最初から英語で書くべき」と説明しています。実際、私も自分で論文を書く際には、0から英語で書き始めています。

しかし、


しかしです。英語論文を書いた事のない学生さんの場合は、むしろまず日本語で書いた方がいいのではないか、と思っています。なぜなら、英語力ない初心者の場合、英語の表現力の限界が、論文の命である論理を崩し始めるからです。英語での言い方がわからないので、簡単な英語で言えるように論理の方を変えてしまう危険性があります。また、1文1文の英語が正しいかどうかに捕らわれて、全体の構成を見失いがちです。

  英語は美しいが論理構成がでたらめな文章と、英語は稚拙だが論理はちゃんとしている文章と、論文としてどちらがよいかは自明の事です。(前者の場合、書いたやつは本物のアホだと思われるでしょう。)ところが、学生さんの場合、サイエンスとしてしっかりと論理を組み立てる事自体が大仕事であり、日本語レポートであっても先生に何回も直されてなんとかまともなものを作っていく事になります。この作業をいきなり英語でやれ、という指導は乱暴でしょう。
  ですから、初心者の論文作成の正しい順番としては、まずは日本語で原稿をかき、先生と議論してサイエンスと論理が完全になるようにする、それを英語に翻訳する、となるのではないでしょうか。論理が崩壊する事に比べれば、翻訳で間違ったり、直訳風になったところで、大した問題ではありません。また、英語を添削する先生にとっても、その学生さんの言いたい事が、日本語で完成していますから、英語を修正するのも簡単です。


  「それでは英語を書く力がつかない。」という指摘はもっともですが、学生にまず求められているのは、英語力ではなく、サイエンスを論理的に考える力ですから、限られた時間でどちらかを犠牲にしなければいけないのならば、英語の方を犠牲にするのは当然でしょう。

  また、「英語的思考で書かないと論理的な文章は書けない、」と書いている本がときおりありますが、それは完全に間違いです。論理的文章を書けないのは、論理的思考能力が足りないからで、英語とは関係ありません。論理的思考ができる人なら何語でも論理的な文章がかけますし、論理的思考ができない人は何語でもかけません。しかもヨーロッパ言語の中では、文法の論理的整合性という点で英語は特殊言語です。だから、「英語は論理的だからうんぬん、それに引き換え日本語はうんねん」と書いている人は、ただの盲目的アメリカ崇拝か、ほんもののアホか、どちらかです。あるいは両方かな。   
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大学で英語校閲Divisionを作ってくれないかなあ。
ネットをチェックしていていつも思うのですが、医薬系、生物系の方は高品質の英語を書く事に多くの労力を割いているようです。一方、物理屋、少なくとも物性物理屋というのは、ホームページを探る限りどういうわけか英語について熱心ではないようです。実際、英文校閲に出す、というのもあまり一般的ではないように思います。どうもある世代以上では「英語に気を使う暇があったら物理を考えろ。」という感覚があるようです。さらに悪い事に、英語の校閲をしてくれる雑誌もほとんどないので、筆者が英語を間違えると、そのまま論文になってしまいます。考えてみるとおっかない話です。

 論文は当然学術的価値で評価されるのですが、もしも英語の質があまりにもひどいと、学術的価値を無視されてrejectされます。(日本人科学者としては業腹な事ですが、文句をいっても時間の無駄です。)だから、最低限の正しい英語を書く事は仕事の一部といってよいでしょう。しかし、いまさら英語の勉強に割く時間はなく、また、英語校閲は高額で、個人や一研究室で毎回支払うのはなかなか大変です。
 
 そこで、私はいつも思う事があります。大学が、所属研究者の書いた論文の英文校閲してくれる専門Divisionを作ってくれないものかと。今や、大学も評価される時代であり、大学にとって所属研究者が優れた論文を沢山発表する事が、生命線といってよいでしょう。従って、もしも、すぐれた科学者でありながら、英語がまずいために不利になっている人がいたら、大学としても損失です。また、ある程度の英語で書かれた論文をさらに磨きあげて、学術的価値にふさわしい見事な英文にする事ができるならば、その分大学にとっても名誉でしょう。
 
 個人で出費する事は厳しくとも、大学が全学を対象としたDivisionを運営するのは、得られるメリットに比べれば安いもののような気がします。その大学に所属する研究者ならば、そのDivisionで無料あるいは格安で英文校閲を受ける事ができるのであれば、英語に不利な研究者でも、英語何ぞに時間を割く事なく、安心して研究にうちこめるかもしれません。  
 さほど困難はないメリットの多いアイデアと思うのですが、いかがでしょうか?(誰にいってるんだろ)
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ちょっと、35年前の英語教育を無意味に批判してみます。
かつて私が中高生のころ(70年代)のカリキュラムでは、英語の難易度をさげる事=文章の知的レベルを下げる事、でした。だからI am a boy.Am I a girl?のごとく愚劣で異常で病的な文章が公然と典型例文として用いられていました。当時のカリキュラム作成者は、英語を理解できない中学生には知性に重大な欠陥があると決めつけていたかのようです。(しかも、2006年の今、性同一視障害ということを考えて振り返って思えば、当時深く深く傷ついた人たちもいたかもしれません。)

改めて書くのもばかげていることですが、授業英語の理解力と知性には相関はありません。また、何語であれ、文章の質と文法的難易度ももちろん無関係です。このサイトのあちこちにばらまいているように、シェークスピアの英語は、古いとはいえごく簡単な英語で書かれた名文がたくさんあります。トマス・ハーディーでもオスカー・ワイルドでも同様で、文法としては初歩的でかつ美しい文章を、英語の専門家ではない私でも見つけるのにさほど苦労はありません。たくさんあるからです。中学の英語教材として考えたとき、文法としては初級だが愚劣で病的な文章と、平易だが格調高い名文と、すべてにおいて急速に成長しつつある中学生にとって、どちらが教材として望ましいかはいうまでもありません。少なくとも十代のころの私は、内容のあまりの愚劣さが不快で、英語を勉強する事を完全に拒絶してしまいました。(若気の至りとはこのことだなあ。)

一方、1970年代当時でも英語教育と反対の事が行われていたのが、漢文の授業です。どのような文法項目の説明でも、用いられている例文は、あの文の国で数千年間の厳しい批評に耐えた名文ばかりです。しかも扱うのは、壮大な歴史絵巻であったり。人間の生き様の不思議であったり、深遠な哲学であったりします。漢文の授業中、先生の説明など聞かず、読み物として教科書を一生懸命よんでいたのを覚えています。細かい文法が分からないにもかかわらず、それが気にならないほど内容があまりに面白く、中華の歴史が目前にありました。ですから漢文の文法規則など初めからから気にならず、本当の意味を理解するのに苦労した記憶がありません。

1970年代の英語カリキュラム作成者に漢文関係者と同じ程度に文学の教養と言葉の重要性の認識があれば、英語のテキストでだって同じ事ができたと思います。しかし当時のカリキュラム作成者は、自らがいかに英文学に無知で、かつ言葉に関して無神経か、という事にあまりにも無自覚でした。もしかしたら連中にとっては、駐留米軍兵士のしゃべくる言葉が到達目標だったのかもしれません。でないと、あんなテキストはつくれない。


最近の英語教材やセンター試験問題は非常によくできていますが、一方で、別な圧力がかかっているようです。すなわち「実用英語」という呪い。

今の日本の英語教育界が、中高生の急成長する知性にふさわしい例文を探す努力を怠っていない事を願っています。ほんとに願ってます。

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