英語論文での文章の構成 |
テクニカルライティングに関するメモ、聞き書き。 一番大事なのは、段落をいかに的確に使うか、という事だと思っています。 もっとも、ここにまとめてはみたものの、自分のものとして消化できず全く身には付いていません。このサイトを見てもらえればわかると思うけど。 さて、私を含めて日本で育った人の多くは、作文の授業で「情緒的な文章」の訓練はしていても、「分かりやすい文章」「明確で簡潔な文章」を書く訓練をうけていないのじゃないでしょうか。そのため、私には、分かりやすく書くという意識も薄く、かつ、どうすれば分かりやすくなるのかをよく知りません。しかも、たくさん論文やレポートを書いていても、それが他人に分かりやすかったかどうかのフィードバックがありません。だからよほど自分で意識して努力しないと。 結局は、酒井先生の「これ論」が一番のお勧め。絶対! |
一般 |
「論文を読まなくても、データ眺めただけでその研究がおもしろい事がわかる。」のが理想的な論文。だからデータの見せ方、Captionにはすごく工夫を。 だから、いまどきはカラーにできるならカラーで。幸い、pdfはカラーでも、印刷別刷りを白黒にするとカラー料金なしで出版できる雑誌がある。節約はしないとね。 論文や発表では、「分かりやすい」と「おもしろい」はだいたい同義語。 で、「わかりにくい」と「つまらない」はまったく同義語 授業も ひとつの論文で二つの問題を扱うのはやめたほうがいい。結論はひとつに。論文数もかせげるし。 |
段落 |
文章としての論文の基本単位は段落。論文のストーリーは、段落を組み立てる事によって構成される。 だから、論文の構想を考える際は段落単位で考える。 ひとつの段落にはひとつのテーマのみを論ずる。ひとつの段落で二つのテーマを議論してはいけない。テーマが変わるところで、段落を変える。段落の長さは問題ではない。あんまり長くなるようなら、テーマを二つにわけられるように、構成を大幅に変える。ただぶったぎればいいわけではない。 段落で一番大事なのは最初の文。段落の最初にはその段落で何が書かれているか(主題)が分かる文を書く。いわばその段落のAbstract。「以下では〜について議論する。」「前段落の問題を解明するには、〜が重要である。なぜなら〜」など。まずは読者に、これから何について議論されるのか、を先行して伝えるのが重要。1行のタイトルをつける気持ちで。 これによって、読者は、これからどの方向に進むかをおおよそ予想しながら読む事ができる。 でも、テクニカルライテイングの本で時折みかける「段落の最初に結論を書くべき」というのは、どうもうまくいかない。たいして長くない段落の最初と最後に2回結論がでてきて、くどい文章になる危険性があるからだ。従って、第1文は結論ではなく主題(ここでは何を議論するのか?)の方がよい。主題と結論を文章として明確に区別しよう。 1行目に何を書けばいいかは、段落の1行目だけを読んでみて論文の骨子が伝わるかどうか、少なくとも、問題点の流れがわかるか、を考える。 論文全体でもっとも大事な段落は、イントロの一番最初の段落。特に第1文。ここはすべての読者に読んでもらえるので、全体の主題がわかるような文にする。「この論文では、この物質のこの性質について報告する。」「この問題をこのような視点から研究した結果を報告する。」「この問題について新しい発見があったのでそれを報告し、他の例と比較する。」とか。あまり具体的に書くと論文のAbstractとぶつかる場合もあるけど、abstractを読まずに一行目を読む人もいるので、あまり気にしない。 第1段落は短い方がいいので、背景まではかかなくいほうがいい。むしろ、すぐに第2段落にはいって、そこで細かい背景説明をする。たとえば、「この論文では、希土類化合物ErB2C2の四極子秩序の可能性について、磁気比熱測定の結果に基づき議論する。」くらいにして、第2段落で、四極子秩序の何が問題なのか、なぜErB2C2を選ぶのか、磁気比熱にどんな重要性があるのか、とかを詳しく書く。 よく見かける「最近、〜について興味が集まっていて、多くの研究がなされている。」では一行目としては弱いし、この論文についての情報をほとんど含んでいないから、無駄。書いても良いけど、第2段落以降。 ひとつの段落内ではひとつの文と次の文の関係が明確であること。それには、接続詞、接続副詞など、論理をつなぐ語、句が重要。箇条書きのような文章はごちゃごちゃして論旨がみえにくい。 論文全体でも、1段落内でも、論旨が一本道であるように組み立てる。すべてが結論に向けてまっしぐらに進むように。そのためには、自分にとって大事なデータ、考えでも、脇道になって主題と直接関連しないものは削除する勇気がいる。 Abstractは、その論文の頭にあるものというよりも、ネットに置かれるものと考えたほうがいい。論文検索では、タイトルとabstractだけ表示されるので、その事を想定して書いたほうがいい。 |
文 |
段落と同様、ひとつの文にはひとつの情報だけをいれる。 だから、うかつにandで文をつなげてはいけない。そもそも、andの使い方には厳密なルールがあり、正しく使うのは案外難しい。 and,orでつなげるのは、文法的にも意味上も等価な語、句、節だけ。文はandではつなげないと思った方が安全。 誰が読んでもひとつの解釈しかできない文章であること。だから、It, This,thatを使う時は、確実にひとつの事を指しているかを確認しながら使う。そのためにくどくなるのはまったく問題ない。英語はそういうくどい言語なのだから。 英語:I went back to my house to take my purse. 日本語:家に財布をとりにもどった。 (「他人の家に入って他人の財布を取ってきたら、盗っ人じゃないか」、というもっともな突っ込みは、英語では意味がありません。ぬすっとだろ、と言われます。) ひとつの文で一番大事なのは最初の単語。多くの場合主語。その段落の主題が主語、あるいは文の先頭になるような文を作る。(これは案外むつかしい) 特に段落の第1文の主語は重要。ここで読み手は主題がなにかを勝手に予想してしまう可能性があるので、重要でない事を主語にすると読み手が混乱するかもしれない。 従って、受動態より能動態がすぐれているという事はなく、主語がその文で最も重要な単語になるように態をえらぶ。 たとえば、HERMESという装置の事を問題にしている段落なら、(実はこの辺のアドバイスは、私は納得してません。) 主語をキーワードに統一する事で、読み手が次に何が書かれるか予想できる。すると、読み手が誤解する可能性が減る。読み手に、今後の議論を予想させ、その予想どおりに議論を進める事ができれば、誤解、混乱する可能性が減る。 It is important to measure the T-dependence of specific heat. この文がよくないのは、 1:無駄に長い。 だけでなく、 2:文の頭が形式的な単語になっている。 から。 Measuring the T-dependence of specific heat is important. (長すぎる主語もどうかとおもうけれど。) |