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唯一のThe



実際のもの、器具で


初出のものは不定冠詞,2回目以降は一個(1グループ)に限定できるので定冠詞

sample の説明のあとに、
The sample was set into a vanadium cylinder. The vanadium cylinder was sealed in an Al cell.
最初のvanadiumセルは実験室にごろごろしているCellのうちのひとつで、特別なものではないのでa、でもその後の文章では、「この研究のための試料をいれたセル」と唯一のセルになったので、Theになる。

でもって読む場合は、the vanadium cylinderのところで「限定されているシリンダーなんだから、これは直前に説明があった試料をいれたシリンダーの事なんだな。」と思うのじゃなかろうか。


The single crystalline sample was grown by the Czochralski method with a tri-arc furnace. The highest temperature of the furnace is about 2000C.
furnaceは試料作成用の高温炉の事で、論文中初めて現れるのでaになる。その後、その炉の説明をするなら、「さっき話にでたあの炉」なので一つに限定できてtheがつく。

一方、Czochralski法は物性実験用試料作成の標準的手法の一つで、物性研究者ならたいてい知っている。つまり、論文の読み手が全員唯一のあの方法を思いつくはずなので、初出語でもthe methodになる。じゃあ、どのくらい知られているとtheかというと、それは書き手次第。



A course of Rembrandt Printings
「レンブラント絵画集成」、作品集は他にもあるから。でも、編集者が自信家なら、the course(唯一無二、最高の集成)としてもいっこうにかまわない。言葉は理屈ではなく、書き手がどう使いたいかでなんとでも書ける。(読み手がその判断をどう思うかは、また別な問題)


さらに本のタイトルから同じパターン:

"Knight's Cross, A life of Field Marshal Erwin Rommel "  by D. Fraster

「Knight's Cross、陸軍元帥エルウイン・ロンメルの伝記」
このlifeは可算名詞だから「人生」とか「生涯」じゃなくて「伝記本」。こちらの作者も謙虚だ。

初出でも1個しかない場合、あるいはそう思っている場合は定冠詞



The sample was mounted at the cold head of a closed cycle He-gas refrigerator.
:本当は、1個しかないから theがつくのではなく、 theをつける事で、読み手にこのrefrigerator(冷凍機)にはcold headが一個しか無いことを伝えている。つまり冠詞というより、形容詞みたい。
もしキングギドラのように複数のcold headを持つ冷凍機があったら、当然、at a cold head of a キングギドラ冷凍機.
(cold headは、実験用冷凍機の部分の名前で、ここが最も低温になる。ここに実験試料を固定して冷却する。)


The president of our society is Mr. Cuzui.
普通、会長、社長はひとつの団体に一人しかいないから、「唯一の」theになる。でも、

A vice-president of our company is a friend of the vice-president of the company called Office 9.
うちの会社には副社長は二人以上いるが、Office 9と呼ばれる会社には副社長は一人しかいないらしい、という事がわかる。つまりaなら「他にもいる」事を、theなら「一人しかいない」事を書き手は伝えている。また、組織として複数いても、実際には副社長といえばあの人に決まっている、と書き手が思っているときはTheにしてもいい。


I feel sick. I will go to the doctor.
この場合は、主治医とか、いつもいっているお医者さん、のこと。the dentistとかも。これもやみくもに「医者に行く」=go to the doctorとおぼえちゃだめ。とおりすがりに医者にとびこみでみてもらうなら、go to a doctorのはず。

the sun(太陽), the moon(月)、the universe(宇宙)、the sky, the sea, the ground, the environment
全人類にとって始めから一個しかないからね。なので、初出でもtheをつける。SF小説ならmoonsとかsunsもありだけど、moonsよりもsatellitesかな。平行宇宙説ならuniversesかも。the army(軍)もthe がつく。一つの国に軍は一つ。ただ、正規軍となんとか防衛隊と二つある国がいくつかある。

でもこまったことに、宇宙空間(space in the universe)は、theをつけないらしい。stars in spaceとか。

自然とはちがうけど、the country。その国民にとっては一個だから。「国をあいてどって」とかいうときの国は日本国をさしているのと同じだな。

The sun is a star.
The hotel which Urecy recommended was a nice hotel.

「唯一のもの」と言いたい時のthe


上の例で、実はthe presidentのtheも、the sun のtheも、ひとりしかいないからtheがつくのではなくて、「只一人しかいないあの」ということを話し手が伝えたいためにtheを使っている。条件無しのthe presidentとは「今現在一人しかいないあの社長」「あの大統領」のことで、つまり現社長、現大統領の事になる。a presidentなら、(社長が二人以上いるのじゃなければ)、歴代社長、歴代大統領のだれかの事。


それに気づいたのは2004年6月のレーガン元米大統領の国葬のとき。米国からの衛星中継で、テロップが以下のようになっていました。

  Farewell to a President

この場合はa Presidentで「元大統領」。ばかな先生がだす試験では「ある大統領」と訳さないと×をくらいそうです。でも、米国内でのpresidentなのでアメリカ大統領のだれかであり、a presidentだから「元大統領」。
一方、この式典にはthe Presidentも存在しています。the Presidentとは、この国葬時には(少なくとも米国では)唯一のPresidentという意味であり、現職大統領、つまり子ブッシュの事になります。冠詞で意味が完全に変る例でもありますね。

また、昭和帝陛下崩御の際の米国のニュース見出しが「Death of an Emperor」となっていたのを覚えています。「元皇帝の死」ではないので「ある皇帝の死」といった感じではないかと思いますが、ちょっと違和感を感じます。エチオピア革命以降、Emperorの称号を正当にもつのは日本国天皇ただひとりですから。(もっとも、独裁者が皇帝を自称したケースがいくつかあります。)

Theがつくと「一つしかないあの」になるケースを日本語の場合でたとえてみましょう。
仙台では「駅」というとJR仙台駅の事をさし、他の駅は「長町駅」「北仙台駅」「地下鉄仙台駅」などと呼びます。つまり、仙台市内には複数の駅があるのに、「駅」という言葉はただ一つの駅をさしています。英語に当てはめると、論理的にはa station になるべきものを無条件にthe stationと呼ぶ事で、他の駅ではなくもちろん仙台駅の事だよ、といっている事に相当します。The station = Sendai stationです。このような「駅」の独占は、仙台ではJR仙台駅が他の駅に比べてケタ違いにでかく重要だからでしょう。同じ事はたいていの地方都市であると思います。
しかし、仙台人にとってはThe station = Sendai stationですが、たまたま出張で仙台にきた都会の人には通用しないかもしれません。「そのビルならthe stationの近くですよ。」「The station? which station?」とか言われるかも。(都会には主要駅がいっぱいありますから。)つまり、冠詞の使い方が話し手、聞き手の知識・常識に依存する事になりますから、文章を書くときには読み手の知識を想定する必要があります。


(日本語には冠詞がありません。しかし、上の例をよく考えると、「仙台駅」=「駅」が成立する場合、限定(仙台)無しである事が定冠詞に対応しているのかもしれません。)

さらに別な例
Excuse me, lady, have you got the time?
「すみません、今、何時ですか?」 条件無しなのにtheで限定できる時間、「現時点で唯一の時間」とはつまり「今」の事。過去も未来も無限にあるからね。(でも、なんでhaveなんでしょう。)なお、無冠詞のtimeなら、物理量としての、あるいは時空の次元としての「時間」。
ところが、

Excuse me, lady, have you got a time?
「お嬢さん、お暇ですか?」 aとthe でこうも違う。間違えたらえらい事だ。

教訓名詞に冠詞がつくのではない。冠詞が名詞を規定する。




"First, what is your place?"
"I am the governor of this place you lie before."
「まず、あなたの御身分は?」
「あなた方が今おられる土地の太守です。」
    Pericles, Act 5, Scn 1

"My mother was the daughter of a king;"
「私の母は、ある王国の王の一人娘でした。」
    Pericles, Act 5, Scn 1


O, no! it is an ever-fixed mark,
That looks on tempests and is never shaken;
It is the star to every wandering bark,
「いや違う。愛(it)とは、しっかりと立つ灯台なのだ;
嵐を見つめながら揺らぎもしないそんな灯台だ。
すべてのさまよえる小舟を導く北極星なのだ。」

    Shakespearのソネット
    
灯台はan markなのに星はthe star。無条件にthe starになるってことは、たぶん、たとえば北極星のような星の事のはず。

"I knew it!, he is the one!"
「やっぱりニオは救世主だ!」Matrix
「あの人」「ただ一人の人」なんだけれど、実は宗教的な背景があって、キリスト教英語圏ではthe oneは「超越者」、「絶対者」を意味して神様、救世主の事を意味するらしい。で、この映画の場合は、皆が待っていたあの救世主、になる。

"She is the one!"
「彼女できまりだ。」  ナタリーポートマンのシャンプーのCM

オーディションを受けにきたナタリーポートマンを見て、監督らしい人がいうセリフ。まさに我々が探し求めていた女優だ、くらいの意味でしょうか。


"I shot the sheriff"
ボブ・マーレーの名曲。

a sheriffでもいいのだけれど、そうすると、例えば「シェリフの仕事をしているある男(か女)」くらいの感じになると思う。the sheriffなら、「おれの町のあのシェリフ」をうっちゃったことになる。なんか因縁があったんだろうな。
レゲエというとこの曲をおもいうかべます。


American Airlines.
The American Airline.
アメリカン航空のキャッチコピー

1行目は、「アメリカの航空会社(複数)」、二行目はtheでただひとつになるから「アメリカン航空」。ちょっと訳しにくいけど、「数あるアメリカの航空会社のなかでも、アメリカン航空が一番」くらいの感じじゃないかなあ。想像だけど。冠詞の使い方で違うものを指す例ですね、


The Championship
テニスのウィンブルドンの正式名称。メインコートのエンブレムに書いてあります。日本語だと全英がつくけど、原語ではこれだけ。何故かというと、あの国の人にとって本当のテニスのChampionshipは世界に一つしかなくて、それはウィンブルドンに決まっているから。

The Football Association
英国フットボール協会の正式名称。略称はthe FA。フットボール協会といえばここだけで、外国のフットボール協会なんて眼中にない。実際、歴史上のある期間は世界で唯一の協会だったし。英国にいけばこの類いはいくらでも見つけられるはず。

The Open (Championship)
ゴルフの全英オープンの正式名称。センドアンドリュースなどで開催されるやつ。


豆知識:
ロンドンにLondon Bridgeという橋がありますが、中世では単にthe bridgeと呼ばれていました。(小文字だったかどうかは知りません。)理由は簡単で、当時はロンドンにはテムズ川にかかる橋が一つしかなかったので、単に「橋: the bridge」といえば十分だったからです。仙台駅の話と似ていますね。




"The difference between a drunk and alcoholic is that a drunk does not have to attend all those meetings." -- A.J. Lewis
The differenceで「唯一の違い(と書き手が思っているもの)」:
「飲んだくれとアル中の違いは、飲んだくれは、禁酒の会の会合にでなくてもいい、ってことだけだ。」
なお、a drunkのaは典型、代表の不定冠詞。飲んだくれなんぞ、どいつもこいつもおんなじだから一人で十分。

"Doctors are the same as lawyers; the only difference is that lawyers merely rob you, whereas doctors rob you and kill you too."
   ---- Anton Chekhov


"I am the punishment of God, If you had not committed great sins, he (God) would not have sent a punishment like me."
「余は神の鞭である。もし汝らが大いなる罪を犯さなかったというならば、汝の神はこのような罰を下しはしなかったろう。」
     Storm from the East by R. Marshall
    
イスラムの王国を征服し、モスクを破壊したチンギス・ハーンの言葉。このtheとaはよく分からない。



初出でも、「全ての〜」の場合はthe+複数形


上の説明では、「1個」という事を強調していますが、実は数は問題ではありません。話し手と聞き手が同じものを連想できるくらい限定されている、という事がポイントです。

例えば、
英国映画:Monty Python and the Holy Grailの1シーンから

"What is your name?"
"It is Arthur, King of the Britons."
「汝の名は?」「我が名はアーサー、ブリトン人の王である。」

the Britons:ブリトン人集団(Britons)で、かつ条件無しでtheで限定できていると言う事は、「今生きている全部のブリトン人」という事。実際、この映画の別なところでは、

"Who goes there?"(誰だ!)
"It is I, Arthur, King of all Britons."
Monty Python and the Holy Grail

(all the Britonsにならない理由はわかりません。)

全部でなければ、無数のブリトン人集団がありえるので、条件なしではthe Britonsといえない。King of Britonsは、ブリトン人の一部に推戴された王、という事になる。
もちろん、一部であっても、たとえば、the Britons who lived in Wales.のような限定があればtheになってもいい。ただし、この場合も(この文章だけなら)「Walesに住んでいたブリトン人全部」であって、「Walesに住んでいたブリトン人の何人か」ではない。


私はいまだにthe Holy Grailより笑える映画にであったことがない。30年以上前の映画だけど。

名前のついたものは、1個に限定されるので定冠詞


powder patterns obtained on the neutron diffractometer HERMES.
HERMESという装置は、東北大学が0から建設した中性子回折装置(neutron diffractometer)で、世界に1台しかない(と少なくとも話し手は思っている)ので、the diffractometer


the tetragonal compound RB2C2
「正方晶化合物RB2C2:」後ろでRB2C2と完全な組成が付いているので一種類の化合物に限定され、the compoundになる。でも a sample of the tetragonal compound RB2C2.


ただし、名前があっても商品名の場合はaになります。

magnetisations were observed with a PPMS .
PPMSも磁性研究用の測定装置だけれど、業者が完成品の形で売っている商品です。商品なら同じ名前の装置があちこちの大学にあるから、a PPMSでないといけない。(ただし、本当は論文ではこのような省略語は御法度。)前置詞にも注意。

通常は普通名詞なのに、冠詞をつけないことで、抽象的な不加算名詞になるケース。

school, universe, hospital, prison, churchなど

My daughter goes to school every day.
My wife and I went to the school to meet the teacher yerterday.

go to schoolで、「学校で教育をうける」という行為。で、後者は、娘のいま通っている(実在の)学校に3者面談にいってきた、ということ。


After I leave school, I want to go to university.

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