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関係代名詞の先行詞



関係代名詞による限定と冠詞


名詞が限定されていればtheを使うが、関係代名詞の先行詞だからといって、常にtheを使うとは限りません。読者、聞き手にとって十分限定されているかどうか、で決まります。
関係代名詞の先行詞はかならずtheがつくと思っている人がいますが、それは間違いです。


I met a woman who was called Mami .
聞き手には誰の事だかわかっていない。名前くらいでは情報が足りない。でも、
I met the woman whom you introduced to me.




This is the diffractometer which was used for our experiments.

This is a diffractometer which was used for our experiments.
一見、同じ文だが、読み手、聞き手がこの実験の事をしっているかどうかで冠詞が異なる。聞き手が何の実験の事か知っている場合、例えば共同研究者としてourに含まれている場合はtheになるが、聞き手が実験の事も装置の事もしらないのであれば聞き手にとって限定されないのでaになる。


一方、
This is the diffractometer which was constructed firstly in this facility..
(妙な文だが、)ある施設で最初に作られた装置は普通ひとつに決まっているので、which以下の限定によって先行詞にtheがつく。


さらに、
This is the diffractometer which we constructed..
whichによる限定は不十分で、この文章だけでは唯一とは限定できないけれど、話し手が、これ1台しか作ってないんだ、という事を言いたい場合、あるいは聞き手がその事を知っている場合、あるいは最近評判の「例の装置」の場合は、theをつけてよい。
This is a diffractometer which we constructed..
「これは私たちが建設した装置のひとつです。」


Clause:節
A part of a sentence which contains a subject and a verb, usually joined to the rest of the sentence by a conjunction

文法書Practical English Usage by M. Swanから引用。節の定義です。先行詞はa part。ちょっと分かりにくい。


There's no art
To find the mind's construction in the face:
He was a gentleman on whom I built
An absolute trust.
--- Macbeth, Act I, Scn.4

「うわべだけみて人の心を知る事などできはしない。あの男は、余が全幅の信頼をおく人物の一人であったのだ。」

信頼をおいていた人物は複数いて、そのうちの一人だからa。これをtheにすると、信頼していたただひとりの男に裏切られてしまったダンカン王の孤独と絶望の物語になるな。


We belong to a tradition in which the concept of defeat has no meaning.

Inherit the Stars, James P. Hogan
「我々の伝統には、敗北という概念は存在しないのだ。」

SFの古典的名作「星を継ぐもの」のラストシーン。「敗北が意味を持たない」という条件がついても、a tradition。「敗北が意味を持たない」のは他にもあるだろうから、とかなんとか理屈は考えられなくもないけど、自分で書くときは悩みそうだ。

人類誕生の真相が明らかになり、それゆえ正当な権利としての宇宙進出を高らかに宣言する印象的な場面です。大どんでん返しのラストシーンは、できることなら記憶を消してもういっかい読みたいくらいです。映画だと「スティング」かな。


結局、関係詞の先行詞の冠詞は、関係節によって十分限定されているかどうか、に注意する。読み手、聞き手にとっての限定が十分でなければ、不定冠詞になる。


The promise is a promise.
「約束は約束だ。」。前のThe promiseは、話し手が誰かとした特定の「あの約束」の事で、the promise which I made。後のa promiseは、一般的な意味の「約束」。珍しく日本語と英語で同じ形になる。確か、シャーロックホームズの「踊る人形」に出てきた文です。


The hotel at which we stayed in Oxford was a nice hotel.
聞き手が「私たち」に含まれていたり、聞き手が「私たち」が一つのホテルにしか泊まらなかった事をしっている。「僕らが泊まったあのオックスフォードのホテル、いいホテルだったね。」

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